Microsoftがソブリンクラウドを大幅強化——政府・規制産業向けに完全オフライン運用も実現

Microsoftは、政府機関や規制産業向けのクラウド戦略「Microsoft Sovereign Cloud(ソブリンクラウド)」について、新たな機能群の提供開始を発表した。データ主権(Data Sovereignty)と規制遵守を重視する組織に向け、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両面で機能を拡充する。

主な新機能・強化点

1. EU内でのエンドツーエンドAIデータ処理

EUデータ境界(EU Data Boundary)の一環として、EUの顧客向けAIサービスで処理されるデータが、すべてEU域内に留まることを保証する。静止データ・転送中データのいずれも、EUの外に出ることなく処理・保管される。GDPRをはじめとするEU規制への対応を強化したい企業にとって重要な進展だ。

2. Microsoft 365 CopilotのEU内処理を15カ国に拡大

Copilotのインタラクションデータに関して、自国内処理(In-country Processing)の対応国を15カ国に拡大する。企業のAI活用を推進しながら、データが国外に出ないことを担保する。

3. Azure Localの切断運用(Disconnected Operations)対応

注目すべきはAzure Localにおける「切断運用」機能だ。インターネットに接続しない完全なオンプレミス環境でも、クラウドと同等の管理・制御プレーンを利用できるようになる。防衛・公共インフラ・金融機関など、インターネット接続自体が制限される環境でのクラウド技術活用が現実的になる。

4. Microsoft 365 Localの一般提供開始(GA)

Microsoft 365のオンプレミス展開版が一般提供を開始。ライセンス管理や認証処理を含めてローカル完結できる構成が可能になる。

5. Azure Localのスケールアップ・ハードウェア対応強化

  • 最大スケールの拡大
  • 外部SAN(Storage Area Network)ストレージのサポート追加
  • 最新NVIDIA GPUへの対応

AI推論やHPC(高性能計算)ワークロードをオンプレミスで処理したいユーザーには朗報となる。

欧州でのインフラ・組織体制も整備

Microsoftは技術面だけでなく、ガバナンス体制の強化も進めている。欧州法に準拠した形でデータセンター運営を監督する「欧州取締役会」を設立し、構成員はすべてEU国籍保有者とした。インフラ面ではオーストリアに新データセンターを開設し、ベルギーへの展開も今月中に予定している。

日本企業への示唆

ソブリンクラウドの議論は欧州が先行しているが、日本でも経済安全保障推進法の施行やサイバーセキュリティ規制の強化を背景に、政府・重要インフラ企業のクラウド調達要件は厳格化が続いている。Azure Localの切断運用機能やMicrosoft 365 Localは、日本の防衛・公共機関・金融機関でも活用が検討されるものだ。Microsoftの動向は日本のクラウド戦略にも直接影響を与えうる。

今回の発表はMicrosoftが2025年6月にCEOのSatya Nadella氏が表明したソブリンクラウド方針の具体化であり、規制対応と技術革新の両立を目指す同社の姿勢が改めて示された形だ。


元記事: Microsoft Strengthens Sovereign Cloud Capabilities with New Services