Microsoft 365テナント内でClaudeが動き出す——Wave 3の全容
Microsoftは、Microsoft 365 Copilotの大規模アップデート「Wave 3」を発表した。目玉となるのが新しいクラウドAIエージェント「Copilot Cowork」だ。AnthropicのClaude技術をベースに構築されており、Outlook・Teams・Excel・PowerPoint・SharePointをまたいで複数ステップの作業を自動的に計画・実行・完結させる能力を持つ。
「チャットから行動へ」——Copilot Coworkの実力
Microsoftのビジネスアプリケーション&エージェント部門社長Charles Lamanna氏は「Copilot Coworkはアクションのために設計されている。単なる会話ではなく、Copilotが実際に動く」と説明する。ユーザーが望む結果を伝えると、Coworkはそれを構造化された実行計画に分解し、バックグラウンドで処理を進める。重要な変更を適用する前には承認チェックポイントが設けられる。
デモでは、1ヶ月分の部下との会議を分析し、出張中の顧客メモをまとめ、競合分析レポートをWordとExcelで自動生成する様子が披露された。アプリをまたいだ手動の調整作業が不要になる点が大きな特徴だ。
AnthropicとMicrosoftの深化する関係
今回の統合は、2025年11月に発表された総額300億ドルのAzureコンピューティング契約を軸とした両社の提携強化を反映している。Anthropicは2026年1月からMicrosoftのサブプロセッサーとして正式に位置付けられ、Microsoftの製品利用規約・データ処理契約・エンタープライズデータ保護フレームワークの適用下に置かれている。
Claudeはマルチステップタスクの複雑な推論部分を担当し、M365アプリとの統合部分はMicrosoft自社モデルが処理するという役割分担が取られている。
Anthropicのデスクトップ版Claudeはユーザーのローカルデバイスで動作するが、Copilot CoworkはM365テナント内のクラウド上で完全に動作する。これにより「Work IQ」と呼ばれるインテリジェンスレイヤーを通じて、メールスレッド・Teams会話・カレンダー履歴・SharePointファイル・Excelワークブックなど、ユーザーの全業務データに接続できる。
データレジデンシーの盲点
Microsoftはエンタープライズデータ保護の枠組みを整備しているが、コンプライアンスやセキュリティ担当者が見落としがちな注意点がある。AnthropicのClaude推論処理がどのデータセンターリージョンで実行されるかという「データレジデンシー(データ保存・処理地域)」の問題だ。GDPRや日本の個人情報保護法など、データの処理場所に制約を持つ組織では、Claudeモデルの有効化前に管理者がデータフローと処理地域を確認する必要がある。
提供時期と価格
- Copilot Cowork: 2026年3月9日からResearch Preview開始、3月末にFrontierプログラムで拡大提供予定
- 利用要件: Microsoft 365 Copilotライセンス(月額30ドル/ユーザー)が必要
- Microsoft 365 E7: 2026年5月1日より月額99ドル/ユーザーで提供開始。Copilot・Agent 365・Entra Suite・E5セキュリティをワンパッケージ化した、約10年ぶりの新エンタープライズライセンスティア
- Agent 365単体: 月額15ドル/ユーザーで5月1日から提供
ClaudeモデルはCopilotライセンス保有テナントのCopilot Chat・Researcher・Excelで利用可能だが、管理者がCopilot設定でAnthropicモデルを明示的に有効化する必要がある。日本企業での導入検討時には、データ処理地域の確認を最初のステップとすることが推奨される。
元記事: Claude is now inside your M365 tenant, but mind the data residency gap