EUがAI法の施行を大幅延期、ヌード生成アプリ禁止も追加
欧州議会は2026年3月26日、EU人工知能法(EU AI Act)の主要規定の施行期限を延期する提案を大多数の賛成で可決した。あわせて、AIを悪用したヌード画像生成アプリ(いわゆる「ヌーディファイアプリ」)の禁止を同法に盛り込む方針も承認された。
延期される主な規定と新たな期限
当初、今年8月に施行予定だった複数の規定が先送りされる見通しだ。
- 高リスクAIシステム(健康・安全・基本的人権に「深刻なリスク」をもたらすとされるもの)の開発者に対するコンプライアンス期限:2027年12月まで延期
- 玩具や医療機器など、業界固有の安全規制が適用されるAIシステム:さらに長い猶予が与えられ、2028年8月まで延期
- AIが生成したコンテンツへのウォーターマーク付与を義務付ける規定:2026年11月まで延期
AIによるヌード画像生成アプリを禁止へ
改正案には、AIを使って実在の人物のヌード画像を生成するアプリの禁止も盛り込まれた。詳細な規制内容は未定だが、「ユーザーがそのような画像を生成できないよう有効な安全対策を講じているAIシステムには適用しない」とされている。
この方針の背景には、2026年初頭にイーロン・マスク氏のAIサービス「Grok」がX(旧Twitter)上で性的なディープフェイク画像を大量生成し、EU内で広く批判を浴びた出来事がある。日本でも同様のディープフェイク被害が社会問題となっており、この規制は国際的な議論に一石を投じる動きとして注目される。
法改正には加盟国との交渉が必要
欧州議会の可決はあくまで第一段階に過ぎない。EUでは欧州議会が単独で法律を変更することはできず、EU加盟27カ国の閣僚で構成される**欧州理事会との交渉(三者協議)**を経て最終的な法文が確定する。8月の当初期限までに正式な変更が間に合うかどうかは不透明だ。
欧州でビジネスを展開する企業への影響
EU AI Actをめぐっては、EUが自ら設定した主要ガイダンスの公表期限を守れなかったり、法律の一部を変更したりするなど、これまでも度重なる混乱があった。今回の延期決定は、欧州でAIサービスを提供する事業者にとって不確実な状況が続くことを意味する。
とはいえ、施行延期によって開発者側には準拠体制を整える時間的余裕が生まれる。特に高リスクAIシステムを手がける企業にとっては、コンプライアンス対応のロードマップを再設計する機会となりそうだ。
世界最初の包括的なAI規制法として注目されるEU AI Actは、日本を含む各国の規制当局にとっても参照点となっており、その動向は引き続き要注目だ。