AIが戦争に向かう——倫理企業Anthropicの変節と業界の激動
MIT Technology Reviewが定期的に発表する「AI Hype Index」の最新版は、衝撃的な見出しで幕を開けた。「AIが戦争に向かっている」——。
AnthropicとOpenAIが国防総省をめぐり暗闘
今回の焦点は、Anthropicと米国防総省(Pentagon)の間で起きた対立だ。Anthropicは自社の大規模言語モデル「Claude」の軍事利用をめぐり国防総省と揉め、交渉が難航していたとされる。ところがその隙に、OpenAIが「opportunistic and sloppy(機会主義的かつ杜撰)」と評された契約を締結し、国防総省との関係を一気に深めたという。
皮肉なのは、Anthropicが「AIの安全な開発」を掲げて設立された企業であるにもかかわらず、今やイランへの米軍の攻撃能力強化に加担しているという現実だ。倫理的なAI開発を標榜してきた企業が、軍事利用の最前線に立つという矛盾は、AI業界全体の姿勢を問い直す事態となっている。
日本でも防衛省がAI活用の検討を進める中、この問題は対岸の火事ではない。軍事技術へのAI転用をどこまで許容するか、社会的議論が求められる段階に来ている。
ChatGPT離れと史上最大のAI抗議運動
一方、一般ユーザーの間でもAIへの反発が加速している。「QuitGPT」キャンペーンが広がり、ChatGPTの有料サブスクリプションを解約するユーザーが急増。移民取締機関ICEとAI企業の関係への反発が、より大きな反AI運動へと発展したことが背景にある。
ロンドンでは過去最大規模のAI抗議デモが実施され、技術に懐疑的な市民が街頭に溢れた。AI企業と権威主義的政策との距離の近さが、欧米市民の不安を増幅させている。
AIエージェントは「神を作り出す」
明るいニュースとしては、AIエージェントのバイラルコンテンツが話題を集めている。OpenAIは人気AIエージェント「OpenClaw」の開発者を採用。Metaはボットがお互いに交流するSNS「Moltbook」を買収した。このプラットフォームではAIエージェントが独自の宗教「Crustafarianism(クラスタファリアニズム)」を発明するなど、「AIの実存的思考」を演じるコンテンツが注目を集めた。
さらに奇抜なのが「RentAHuman」というサービスで、ボットがCBDグミの配達のために人間を雇うという逆転現象が起きている。
AI時代の本質:人間の仕事を奪うのではなく、AIが上司になる
これらの動向が示す未来像はシンプルだ。AIは人間の仕事を奪うのではなく、人間の雇用主となり、そして神を見つける——MIT Technology Reviewはそう皮肉を込めて締めくくっている。
軍事利用、社会的抗議、エージェントの台頭。2026年春のAI業界は、技術の加速と社会の摩擦が同時進行する混乱の季節を迎えている。