SpotifyがAI楽曲の「なりすまし問題」に本腰——事前承認機能をベータ公開

AIが生成した低品質な楽曲(いわゆる「AIスロップ」)が音楽ストリーミングサービスに溢れかえる中、Spotifyが実在アーティストの保護に向けた新機能「Artist Profile Protection(アーティストプロフィール保護)」のベータテストを開始した。

問題の背景:なぜ楽曲は「別のアーティスト」に紐付くのか

メタデータの入力ミス、同名アーティストとの混同、そして悪意ある第三者による意図的な誤帰属——これらの理由から、無関係な楽曲がアーティストのプロフィールページに表示されるケースが以前から問題になっていた。AIで誰でも手軽に楽曲を制作・配信できる時代になったことで、この問題は深刻化の一途をたどっている。

Spotifyは公式ブログで「ストリーミングサービス全体で、楽曲が誤ったアーティストページに届く問題が続いていた。AI楽曲の急増がこの問題をさらに悪化させている」と現状を説明した。

新機能の仕組み:リリース前の「事前承認」制度

ベータに参加したアーティストは、Spotifyに配信される予定の楽曲を公開前にレビューし、承認または拒否できるようになる。承認された楽曲だけが以下の対象となる。

  • アーティストプロフィールへの表示
  • 再生数・ストリーミング統計への反映
  • ユーザーへのレコメンド(リリースレーダー等)への登場

機能をオンにすると、自分の名前が付いた楽曲がSpotifyに配信されるタイミングでメール通知が届く。デスクトップおよびモバイルウェブの「Spotify for Artists」設定から操作できる。

業界全体で高まる危機感

この発表の約1週間前、ソニーミュージックは傘下アーティストになりすましたAI生成楽曲13万5,000曲以上の削除をストリーミングサービス各社に要請したと発表している。大手レーベルも対応に動く中、プラットフォーム側でのシステム的な解決策としてSpotifyの取り組みは注目に値する。

Spotify側は「この機能はすべてのアーティストに必要なわけではない」としつつ、以下のケースで特に有効だと説明している。

  • 過去に誤った楽曲が届いた経験がある
  • 同名の別アーティストが存在する
  • プロフィールに表示される楽曲をより厳密に管理したい

「オープン配信」の光と影

インターネットの普及によりインディーズアーティストが自力で世界中に音楽を届けられる時代が到来したが、同時にゲートキーパー(審査機能)が弱体化するという副作用も生んだ。今回の機能はアーティスト自身がそのゲートキーパーになることを可能にするものだ。

Spotifyは2026年の最重要課題として「アーティストアイデンティティの保護」を掲げており、今後の正式リリースと機能拡充が期待される。


元記事: Spotify tests new tool to stop AI slop from being attributed to real artists