AKSがGateway APIをプレビューサポート——Ingress-NGINXからの移行に備えよ
Microsoftは2026年3月18日、Azure Kubernetes Service(AKS)のアプリケーションルーティングアドオンにおいて、Kubernetes Gateway APIのプレビューサポートを発表した。これにより、従来のIngress APIに代わる新しいトラフィック管理モデルがAKSに導入されるとともに、2026年11月に迫るIngress-NGINXの廃止に向けた明確な移行パスが示された形だ。
なぜ今、Gateway APIなのか
KubernetesにおけるHTTPサービス公開の定番手段だったIngress APIは、仕様が意図的に最小限に抑えられており、高度なルーティングには各プロバイダー独自のアノテーションを使わざるを得なかった。また、単一リソースのフラットなモデルは、プラットフォームチームとアプリチームが役割分担する実際の組織構造とかみ合わない点も課題だった。
これを解決すべくSIG Networkが設計したのがGateway APIだ。以下の3層構造でロールに応じた責任分担を実現する。
- GatewayClass — ゲートウェイインフラの種別定義(インフラ運用者が管理)
- Gateway — ゲートウェイとリスナーのインスタンス化(クラスター運用者が管理)
- HTTPRoute / GRPCRoute — アプリのトラフィックルール(開発チームが管理)
この分離により、プラットフォームチームが共有ゲートウェイインフラを所有しつつ、アプリチームが独立してルーティングルールを制御できる。トラフィック分割やヘッダーベースルーティング、バックエンドの重み付けといった機能もファーストクラスでサポートされており、これまでベンダー固有の回避策が必要だった機能が標準化される。
Ingress-NGINXの廃止タイムライン
2025年11月、Kubernetes SIG NetworkとSecurity Response CommitteeはIngress-NGINXプロジェクトの廃止を発表し、2026年3月にアップストリームのメンテナンスが終了した。
Microsoftは移行期間のブリッジとして、アプリルーティングアドオンのマネージドNGINX実装に対するセキュリティパッチ提供を2026年11月まで継続する。ただしそれ以降はAzureサポートの対象外となるため、利用者はそれまでに移行を完了する必要がある。
新モード:--enable-app-routing-istio
今回の新機能は--enable-app-routing-istioオプションで有効化する。内部的には軽量なIstioコントロールプレーンを展開してゲートウェイインフラを管理するが、フルのIstioサービスメッシュは有効化しない。サイドカーインジェクションなし、ワークロードへのIstio CRD適用なし——Istioが得意とするEnvoyベースのゲートウェイプロキシ管理だけを行う構成だ。
approuting-istio GatewayClassを使ってGatewayリソースを作成すると、AKSは以下を自動プロビジョニングする。
- トラフィックを処理するEnvoyベースのDeployment
- 外部公開用のLoadBalancer Service
- HorizontalPodAutoscaler(デフォルト:CPU 80%で2〜5レプリカ)
- 安全なアップグレードのためのPodDisruptionBudget(最低1台稼働保証)
ユーザーはGatewayとHTTPRouteを定義するだけで、インフラ管理はAKSに任せられる。
既存のIstioサービスメッシュアドオンとの違い
既にIstioサービスメッシュアドオンを使っている場合は注意が必要だ。両者は同時に有効化できず、一方を有効にするには他方を無効にする必要がある。主な違いは以下の通り。
項目 アプリルーティング Gateway API Istioサービスメッシュアドオン
GatewayClass
approuting-istio
istio
サイドカーインジェクション なし クラスター全体で有効
Istio CRD インストールなし インストールあり
アップグレード インプレース(マイナー・パッチ) マイナーバージョンはカナリア方式
Ingress-NGINXを利用中のAKSクラスターを運用している場合、2026年11月のサポート終了に向けて早めの移行計画を立てることが推奨される。
元記事: Announcing Gateway API support for App Routing (preview) | AKS Engineering Blog